【新発見!沖縄145】台湾有事の国民保護〜県民の避難を推進する沖縄県知事、避難経路の安全を守る自衛隊〜

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新発見!沖縄145

台湾有事の国民保護

〜県民の避難を推進する沖縄県知事、避難経路の安全を守る自衛隊〜

(2022年6月28日 八重山日報掲載 )

 「基地があるから狙われる」「軍隊は県民を守らなかったことは歴史が証明している」。このようなフレーズを沖縄の新聞でみることが多々あります。そのようなフレーズを目にして「またか」と感じたり、笑止千万だと思った方も多いのではないでしょうか。このようなフレーズはこれまでは聞き流しても良かったかもしれません。しかし、台湾有事の危険性が高まった現在、その誤った考え、もしくは明確に反論しないことが沖縄県民の命を危険にさらすことになります。自衛隊の抑止力を低下させ敵の攻撃を招き、更に有事の際の島民の避難を訓練不足で不可能にさせ、逃げ遅れて戦禍に巻き込むことになるからです。

 自衛隊配備を推進している方でも、台湾有事の際、県民の命を守る方法やその責任の所在について、大きな誤解をしている方が多くいらっしゃいます。そのため、「基地があるから狙われるのではなく、基地があるから守られる」と反論したりします。そのような反論を聞くと、私は冷や汗が出てしまうのです。有事の際基地が敵の攻撃目標になることは自衛隊反対派が主張していることは一部あたっているのです。基地の有無そのもので安全を担保するのではなく、総合的な抑止力が機能しているかどうかが安全を担保するのです。

 抑止力が働いているかどうかは、中国海警局の尖閣諸島での活動を見ればわかります。何度警告しても居座っているというのは、既に日米の抑止力が東シナ海で十分機能していないということです。もう少し突っ込んで説明するなら、東シナ海における米軍の抑止力が低下してきた証でもあるのです。普通の国なら、海警局の艦船が一度領海侵犯したなら二度と領海侵犯しないように何らかの方法で抑止力を増強するはずです。それでも再び領海侵犯したなら、国民から大きな非難の声があがり、更に抑止力を増強するはずです。

 しかし、日本は長い間抑止力を米国、特に核の傘に依存してきたため、自国で抑止力を高める方法について、思考すらしてこなかったのです。そのため、抑止力を高めるという方向に思考が進まないのです。その思考の欠如は沖縄戦の誤認識にまで及んでいるのです。まるで、先の大戦で日本軍が沖縄を戦場に選び、現在の自衛隊の沖縄への増強配備は、再び沖縄を戦場にしようとしているという言説がまかり通っているのです。そうではなく、沖縄への上陸を決定したのは米軍であり、それを防ぎきれなかったのは、日本軍の抑止力が足りなかったからです。沖縄戦の教訓を得て沖縄を再び戦場にしないためには、「十分な抑止力を持つ自衛隊を配備」することです。中途半端ではいけないのです。

 次に、「軍隊は県民を守らない」とい言説について「何を行っているんだ!自衛隊は国民を守るんだ!」と短絡的に反論し、有事の際、自衛隊が国民を避難させてくれると勘違いされている方も多いと思います。しかし、そこにも、日本国民の戦争に対する知識な欠落が存在しています。現在の国際人道法では、紛争当事国は、文民と軍隊とを分離し、適切に文民保護を行うことは重要な責務となっています。つまり、自衛隊と民間人が一緒に行動することは、民間人を敵の攻撃に巻き込むことになるため、それは回避しなければならないのです。ですので、沖縄が戦場になった場合、避難させるのは自衛隊ではなく、自治体の役割と定められているのです。それは、平成16年に交付された武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(通称:国民保護法で明確に定められています。政府が武力攻撃事態を認定した際、政府が避難対象地域と避難先を命令し、その命令を受けた都道府県が避難経路を定め、輸送手段を手配し、都道府県から命令の伝達を受けた市区町村が直ちに避難実施要領を策定し避難誘導を実施するという役割分になっています。国民保護の基本計画は沖縄県の読谷村を除いては全国の自治体は作成済みです。

 自衛隊も国民保護の任務につくことを想定し計画を策定していますが、それは本務に支障を生じない範囲という条件が存在します。自衛隊が優先的に国民避難を優先させないということについて憤りを感じる方がいるかも知れませんが、有事に置いて国民が安全に避難できるかどうかは、航空優勢と海上優勢を確保することが条件です。そのためには、国民が1日でも長く安全に避難するためには、自衛隊が全力で敵の排除を行うことが最も合理的な役割分担です。避難誘導は県庁職員や市町村の職員でも訓練さえすれば実行可能ですが、武器を持って敵を排除することは自衛官にしかできません。有事に置いて自衛隊に敵の排除に専念してもらうことが、国民の安全を守ることにつながるのです。

 よって、有事の際、私達が自衛隊に期待するのは、災害の時のように国民に寄り添って避難させてくれることではなく、敵の排除、避難経路の安全の確保です。そして、航空機や船舶など避難手段の確保は沖縄県に求めなくてはなりません。更に、避難誘導や平素の避難訓練については市区町村にその責務があるのです。
このように、有事における自衛隊と自治体の役割分担を明確に知っておくことが、私達の命を守るための重要な備えとなります。是非、多くの方に知らせていただきたく願います。