■日中の立場を逆転させた首脳会談の延長延期
今はまさに日本の国家存亡の分かれ道です。
外交・安全保障を間違ってはなりません。是非最後までご一読をお願いいたします。
12月25日野田総理は訪中し温家宝、胡錦濤の両首脳と会談をしました。
北朝鮮安定に向け連携確認 日中首脳会談終わる(11/12/25)
野田総理は、会談にて「朝鮮半島の平和と安定は日中両国によって共通の利益、北朝鮮の拉致問題や核開発問題の解決に協力をして欲しい」と要請しました。これで、完全に中国の罠にハマってしまいました。
本来、日中首脳会談は12月13日に開催される予定でした。それが直前に中国政府の都合で延期されたのです。この会談が延期されなかったら会談の内容は全く異なるものになっていたはずです。
11月28日のブログに当時の首脳会談に関する報道について詳しい説明していますのでご参考にしてください。
<■大丈夫か?野田総理、米中冷戦勃発直後の訪中(2011/11/28)>
先月末には中国政府は日中境界線の確定に関する協議の再開を提案していました。
<中国、日本に境界協議再開を提案 尖閣問題の再燃不可避>
(共同通信 2011/11/28 10:32)http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011112801000997.html
【北京共同】野田首相の12月中旬の中国訪問に向け、中国政府が、2003年末を最後に中断している国連海洋法条約に基づく東シナ海の日中境界画定に関する協議の再開を提案していることが28日、分かった。複数の日中関係筋が明らかにした。
日中境界画定協議では、日本側の基点となる沖縄県・尖閣諸島の領有権をめぐる両国の対立再燃が不可避。中国側は協議を通じて領土問題を浮き彫りにし、日本側に問題を認めさせる狙いがあるとみられる。
ただ日本も海洋法に基づく問題解決の原則に異論はなく、協議再開が直ちに領土問題の存在を認めることにはならないため提案を基本的に受け入れる方向。
また、同日の中国の新聞では、訪中した野田総理が中国のサイバー攻撃問題に言及すると報道されていました。
<日本のメディア:野田佳彦訪中でハッカー問題に言及>
(環球網 2011年11月28日 09:56)http://news.qq.com/a/20111128/000580.htm
しかし、会談が延長された12日間の間に金正日が死亡し、日中の立場が逆転してしまいました。つまり、日本は中国に対して抗議をする立場から協力を要請しなければならない立場に180度変わってしまったのです。
■金正日の死亡を利用して中国包囲網の突破を狙う中国政府
これにより、中国包囲網に綻びが入ってしまう危険性が高くなった事に気をつけなければなりません。
金正日の死亡直後の玄葉外相とクリントン国務長官の会談では「日米韓3カ国が地域の安定確保のため緊密に連携していく必要性で一致」しました。
対北朝鮮で日米韓連携 玄葉外相とクリントン氏
(共同通信 2011/12/20 10:48 )http://www.47news.jp/news/2011/12/post_20111220054601.html
【ワシントン共同】玄葉光一郎外相は19日昼(日本時間20日未明)、米国務省でクリントン長官と会談した。両氏は北朝鮮の金正日総書記死去という新たな事態を受け、日米韓3カ国が地域の安定確保のため緊密に連携していく必要性で一致した。玄葉氏は、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、米側に一層の理解と協力を要請した。 北朝鮮が後継者の金正恩氏を中心に権力基盤を軍に置いた体制に移行するとみられる中、日米両国が権力継承をめぐる混乱への懸念と「朝鮮半島の安定が重要」とのメッセージをいち早く出した形だ。
この表明に日米韓の連携が最も重要とあり、中国が入っていないことに注目しなければなりません。
野田総理は、このクリントン国務長官のメッセージには、中国包囲網を崩してはならないという意図があった事を読み取らなければなりませんでした。
米国の中国包囲網は中国敵視政策です。米政府が6カ国協議の再開を口にしたとしても本音では中国が議長国である6カ国協議を当てにしているとは到底考えられません。
幸い今回の首脳会談では、中国包囲網に致命的な亀裂が入るような事はありませんでした。しかし1段階目の罠にはまったことは事実です。日本政府が北朝鮮問題についても、決して中国依存外交をしないように国民から声をあげていく必要があると思います。
これからは日本は、表面では中国との友好を求めるような美辞麗句を使った外交をしながらも、裏では米国及び中国と敵対している国と連携しながら中国包囲網を着々と築いていく外交・防衛政策を進めていかなければなりません。
■金正日の死亡は中国共産党の陰謀か?
さて、今回明らかになったように日中首脳会談を延長している間に起きた金正日の死亡は、中国にとって日本との交渉を有利に進めるのに非常に役立ちました。この金正日の死亡のタイミングあまりにも中国にとって都合が良いので、根拠は何も無いのですが、金正日の死亡に中国共産党が関わっているのではないかと推測してしまいます。今後、中国は朝鮮半島の不安定を最大限に利用し日米両国、アジア各国に個別に働きかけ中国包囲網の突破に動いてくることは間違いありません。
■台湾武力統一にとっても有利に働く金正日の死亡
金正日の死亡は、来年の台湾の武力統一を有利に進めるためにも絶妙なタイミングだと思います。
来年の1月14日には台湾総統選挙が行われます。中国亡命作家、袁紅冰氏の著した書籍「暴かれた中国の極秘戦略」によると中国共産党は来年秋の第18回党大会で台湾統一の祝賀式を行わなければならない事になっています。その際、武力を使わない統一戦線工作の実現が難しい場合、「反国家分裂法」に基づき武力統一を行うことになります。人民解放軍にとって最大の障害は米軍です。核有事の危険性がある朝鮮半島は、米軍を惹きつけるのに最も有効なカードです。台湾総統選挙は1月14日に行われ、4月15日は金日成生誕100周年を迎えその日を強盛大国の大門を開く年として祝賀式を開催する予定となっています。
この日程から中国の動きを推測してみたいと思います。
(1)総統選終了後の状況を見て中国は台湾を統一するための大義名分を作り始めます。
(2)4月15日を前にして強盛大国の祝賀をしたい北朝鮮にミサイル発射や核実験の許可(または支援)を与えます。
(3)日米韓は朝鮮半島の非常時に備え軍隊を展開します。
(4)その間に、中国は6カ国協議を持ちかけながら日米の軍隊を朝鮮半島に貼りつけるよう時間稼ぎをします。
(5)一方台湾へは新政権へ「平和統一」について交渉を持ちかけます。
(6)人民解放軍は最も良いタイミングを見計らって、サイバー攻撃で日米両軍へ奇襲攻撃をかけ、米軍・自衛隊が混乱している間に電撃的に数日で台湾の武力侵攻を果たします。
(7)日米が避難すると「台湾は中国のひとつの省であり、内政問題であり他国が口出しする問題ではない!」と一蹴します。
(ちなみにサイバー攻撃は北朝鮮に行わせるかも知れません。)
■北朝鮮問題の中国依存は日本滅亡への道
以上、来年前半の東アジア情勢をシミュレーションしてみました。非常に悲観的なシミュレーションですが国防とはあらゆる想定に備えるものです。天変地異のように「想定外でした」ではすまされないのです。
シミュレーションがどこまで正確かはわかりませんが、言えることは米中冷戦が始まっている中で、安全保障問題に関する中国依存は日本を滅亡に導くということです。アジアの不安定の原因は「中国+北朝鮮」です。中国が北朝鮮の核放棄に動くことはまずありません。この二カ国を日米とアジア各国で協力して封じ込める意外にアジアの平和と安定を築く方法は無いということです。
(仲村覚)